コラム
カンテの基礎知識

 
201回 間違えやすいフラメンコ用語:
                          クワドロ形式とタブラオ形式

2021年5月8日アップ

なんか違いがわかり難いフラメンコ用語ってありますよね。
レッスンを受け始めたものの、しばらく公演に通ったものの、
なんだかすっきりとしないあなたの為に、
そんな違いがわかり難いフラメンコ用語を解説いたします。
 
今回紹介するのはクワドロ形式とタブラオ形式です。
これ、主に日本のバイレの世界で使われている言葉で、
フラメンコのショーの形を表していると思うのですが、
実はスペインにはクワドロ形式と言う言葉はあっても、
タブラオ形式という言葉はありません。
 
では、まずスペインでも使われているクワドロ形式についてお話ししましょう。
 
クワドロと言うのはもともと数字の4から来ていて四角いものを表します。
 
辞書を引くとテーブル、表なんて書いてありますが、
スペインでは額縁に入った絵のことをクワドロと呼ぶのが一般的です。
 
実はクワドロ形式というのは、この<額縁に入った絵>を指した言葉なんです。
 
タブラオや劇場、ペーニャなど様々な会場でのフラメンコ公演で、
1枚の額縁に入った絵のように演目が行われるのがこのクワドロ形式。
 
といっても、舞台上のアーティストが絵に描いたように動かない訳では
ないんです。
 
もちろん、踊ったり、歌ったり、演奏したりはするんですけど、
舞台上のアーティストが舞台からいなくなったり、脇から出てきたりしない、
最初から最後まで同じメンバーがずっと舞台にいること、
それがクワドロ形式です。
 
タブラオなどでは、最初にその日の出演者が全員舞台に上がって挨拶をして、
それから踊り手が順に踊ったり、カンテやギターそろもあったりするんですが
自分が出番ではない時も、舞台から降りたりしないで、
全員がずっと舞台上にいるってことなんですよ。
 
”ん?だから?なんでわざわざクワドロ形式って呼ぶ必要があるの?”
そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
 
自分が出番の時は確かにクワドロ形式でもなんでも関係ないのですが、
問題は自分が出番じゃない時なんです。
 
たとえば他の踊り手さんが踊っている時、
カンテさんやギターさんはお休みなく歌ったり演奏したりしてますが、
自分の番じゃない踊り手さんはどうしているでしょう?
 
ぼーっと踊りを眺めていたりきょろきょろしていたりしちゃいますか?
 
いえいえ、舞台にいるかぎりはお客さんからずっと見られているのですから、
たとえ自分が踊る番じゃなくても、舞台にいる人らしくしていないと
いけないですよね。
 
では、どうしていれば、お客さんから見ていて、いい感じでしょうか?
 
一番おさまりがいいのがパルマやハレオをすることです。
(パルマ=手拍子 ハレオ=掛け声)
 
お客さんからしても、ずらっと並んだ踊り手さん達がパルマを叩いたり、
掛け声をかけて踊りを盛り上げるのは、見ていても楽しいと思います。
 
それで、日本でもクワドロ形式を取り入れたバイレ教室では、
踊りだけではなく、パルマやハレオも練習する時間があったりするんですよね。
 
お教室の発表会などで、実際にクワドロ形式を行わなかったとしても、
フラメンコ感覚?を鍛えるためにはパルマやハレオの練習は効果的ですし、
だまって振り付けを学ぶだけのレッスンよりも、楽しかったりもします。
 
そうそう、ここでパルマやハレオで大事なことを
ひとつお話ししておきたいと思います。
 
レッスンでは、生徒全員でパルマを打ったりハレオをかけたり
すると思うんですけど、それは、あくまでもレッスンでのことなんです。
 
ご自身が出演者としてショーに参加している時は、
もちろんパルマやハレオを必要に応じて使いますが、
観客としてショーを見ている場合は、
パルマは厳禁、ハレオも最小限で小さい声でがいいと思います。
 
というのも、パルマはその演奏のスピードを決める大事な要素なので、
前もってどのくらいのスピードでその演目が進むのかを知らない人が
手を出してはいけないんです。
 
同じようにハレオも、ジャマーダ(合図)として使っている場合もあるので
観客のハレオがうるさくて、肝心のアーティスト達が
お互いのハレオを聞き取れなくては困ります。
 
大事な<スピードを変える瞬間>や<全員でいっせいに止まる>タイミングで、
なにも知らない観客が大声でハレオをかけてしまっては、
演奏もぐずぐずになりますし、せっかくの見せ場が台無しになることも。
 
その場にお客さんでいる時は、
パルマもハレオも基本的に心の中だけでお願いしますね。
 
実は、このクワドロ形式、以前はスペインでも
ほとんどのタブラオで行われて来たんですが、
10年くらい前から見かけることはなくなりました。
 
というのも、最近のフラメンコ公演では
あまり強いパルマは好まれなくなったからで、
劇場公演でも、全くパルマ無しという公演も少なくありません。
 
たとえパルマを入れる場合でも、
パルマの専門家が繊細に音量音質などもコントロールしながら、
かなり軽めの音で丁寧にいれることが多いようです。
 
ですので、特にパルマの専門家でもないのに舞台にあがっているから
とりあえずパルマを叩くというのは、時代に合わなくなってきたんですよね。
 
現在のスペインでは、
タブラオでもその演目に参加していない人は舞台から降りるのが一般的で、
カンテさんとギターさんだけがずっとステージにいて、
踊り手さんは自分の出番の時だけ舞台に上がるようになりました。
 
という訳で、今はスペインのタブラオでも
クワドロ形式はほとんど行われていないんです。
 
ただ、スペインのフラメンコ界で少し前から流行している懐古趣味によって、
あえて劇場公演の中で、昔風のタブラオを演じて見せる公演を
ここ数年、時々みかけるようになりました。
 
その場合は、あえてクワドロ形式をとって
懐かしさを醸し出したりするんですよ。
 
以上、クワドロ形式の説明をしてきましたが、タブラオ形式と言うのは、
クワドロと言う言葉がわかり難いので、
日本で使われるようになったのではないかと思います。
 
どちらにしても、自分の出番でない踊り手さんや、
カンテさんやギターさんが複数いる場合その演目の演奏に参加していない人が、
舞台上でどうすごすのか、観客にどう見せるのかを考えた結果です。
 
今後も、クワドロ形式での公演はほとんど行われることはないと思いますが、
フラメンコ感覚アップの為にも、パルマやハレオの練習は大事だと思います。
 
クワドロ形式とタブラオ形式、おわかり頂けましたでしょうか?
 
 
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なんか違いがわかり難いフラメンコ用語ってありますよね。
レッスンを受け始めたものの、しばらく公演に通ったものの、なんだかすっきりとしないあなたの為に、そんな違いがわかり難いフラメンコ用語を解説いたします。
 


 
今回紹介するのはクワドロ形式とタブラオ形式です。
 
これ、主に日本のバイレの世界で使われている言葉で、フラメンコのショーの形を表していると思うのですが、実はスペインにはクワドロ形式と言う言葉はあっても、タブラオ形式という言葉はありません。
 


 
では、まずスペインでも使われているクワドロ形式についてお話ししましょう。
 
クワドロと言うのはもともと数字の4から来ていて四角いものを表します。
 
辞書を引くとテーブル、表なんて書いてありますが、スペインでは額縁に入った絵のことをクワドロと呼ぶのが一般的です。
 


 
実はクワドロ形式というのは、この<額縁に入った絵>を指した言葉なんです。
 
タブラオや劇場、ペーニャなど様々な会場でのフラメンコ公演で、1枚の額縁に入った絵のように演目が行われるのがこのクワドロ形式。
 
といっても、舞台上のアーティストが絵に描いたように動かない訳ではないんです。
 


 
もちろん、踊ったり、歌ったり、演奏したりはするんですけど、舞台上のアーティストが舞台からいなくなったり、脇から出てきたりしない、最初から最後まで同じメンバーがずっと舞台にいること、それがクワドロ形式です。
 


 
タブラオなどでは、最初にその日の出演者が全員舞台に上がって挨拶をして、それから踊り手が順に踊ったり、カンテやギターそろもあったりするんですが自分が出番ではない時も、舞台から降りたりしないで、全員がずっと舞台上にいるってことなんですよ。
 


 
”ん?だから?なんでわざわざクワドロ形式って呼ぶ必要があるの?”
そう思う方もいらっしゃるかもしれませんね。
 
自分が出番の時は確かにクワドロ形式でもなんでも関係ないのですが、問題は自分が出番じゃない時なんです。
 


 
たとえば他の踊り手さんが踊っている時、カンテさんやギターさんはお休みなく歌ったり演奏したりしてますが、自分の番じゃない踊り手さんはどうしているでしょう?
 
ぼーっと踊りを眺めていたりきょろきょろしていたりしちゃいますか?
 


 
いえいえ、舞台にいるかぎりはお客さんからずっと見られているのですから、たとえ自分が踊る番じゃなくても、舞台にいる人らしくしていないといけないですよね。
 


 
では、どうしていれば、お客さんから見ていて、いい感じでしょうか?
 
一番おさまりがいいのがパルマやハレオをすることです。
(パルマ=手拍子 ハレオ=掛け声)
 


 
お客さんからしても、ずらっと並んだ踊り手さん達がパルマを叩いたり、掛け声をかけて踊りを盛り上げるのは、見ていても楽しいと思います。
 
それで、日本でもクワドロ形式を取り入れたバイレ教室では、踊りだけではなく、パルマやハレオも練習する時間があったりするんですよね。
 


 
お教室の発表会などで、実際にクワドロ形式を行わなかったとしても、フラメンコ感覚?を鍛えるためにはパルマやハレオの練習は効果的ですし、だまって振り付けを学ぶだけのレッスンよりも、楽しかったりもします。
 


 
そうそう、ここでパルマやハレオで大事なことをひとつお話ししておきたいと思います。
 
レッスンでは、生徒全員でパルマを打ったりハレオをかけたりすると思うんですけど、それは、あくまでもレッスンでのことなんです。
 


 
ご自身が出演者としてショーに参加している時は、もちろんパルマやハレオを必要に応じて使いますが、観客としてショーを見ている場合は、パルマは厳禁、ハレオも最小限で小さい声でがいいと思います。
 


 
というのも、パルマはその演奏のスピードを決める大事な要素なので、前もってどのくらいのスピードでその演目が進むのかを知らない人が手を出してはいけないんです。
 


 
同じようにハレオも、ジャマーダ(合図)として使っている場合もあるので観客のハレオがうるさくて、肝心のアーティスト達がお互いのハレオを聞き取れなくては困ります。
 


 
大事な<スピードを変える瞬間>や<全員でいっせいに止まる>タイミングで、なにも知らない観客が大声でハレオをかけてしまっては、演奏もぐずぐずになりますし、せっかくの見せ場が台無しになることも。
 
その場にお客さんでいる時は、パルマもハレオも基本的に心の中だけでお願いしますね。
 


 
実は、このクワドロ形式、以前はスペインでもほとんどのタブラオで行われて来たんですが、10年くらい前から見かけることはなくなりました。
 
というのも、最近のフラメンコ公演ではあまり強いパルマは好まれなくなったからで、劇場公演でも、全くパルマ無しという公演も少なくありません。
 


 
たとえパルマを入れる場合でも、パルマの専門家が繊細に音量音質などもコントロールしながら、かなり軽めの音で丁寧にいれることが多いようです。
 
ですので、特にパルマの専門家でもないのに舞台にあがっているからとりあえずパルマを叩くというのは、時代に合わなくなってきたんですよね。
 


 
現在のスペインでは、タブラオでもその演目に参加していない人は舞台から降りるのが一般的で、カンテさんとギターさんだけがずっとステージにいて、踊り手さんは自分の出番の時だけ舞台に上がるようになりました。
 
という訳で、今はスペインのタブラオでもクワドロ形式はほとんど行われていないんです。
 


 
ただ、スペインのフラメンコ界で少し前から流行している懐古趣味によって、あえて劇場公演の中で、昔風のタブラオを演じて見せる公演をここ数年、時々みかけるようになりました。
 
その場合は、あえてクワドロ形式をとって懐かしさを醸し出したりするんですよ。
 


 
以上、クワドロ形式の説明をしてきましたが、タブラオ形式と言うのは、クワドロと言う言葉がわかり難いので、日本で使われるようになったのではないかと思います。
 


 
どちらにしても、自分の出番でない踊り手さんや、カンテさんやギターさんが複数いる場合その演目の演奏に参加していない人が、舞台上でどうすごすのか、観客にどう見せるのかを考えた結果です。
 


 
今後も、クワドロ形式での公演はほとんど行われることはないと思いますが、フラメンコ感覚アップの為にも、パルマやハレオの練習は大事だと思います。
 
クワドロ形式とタブラオ形式、おわかり頂けましたでしょうか?
 
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