コラム
カンテの基礎知識
207回 間違えやすいフラメンコ用語:
ジプシーとヒターノ
なんか違いがわかり難いフラメンコ用語ってありますよね。
レッスンを受け始めたものの、しばらく公演に通ったものの、
なんだかすっきりとしないあなたの為に、
そんな違いがわかり難いフラメンコ用語を解説いたします。
今回紹介するのはジプシーとヒターノです。
ジプシーとヒターノはどちらもフラメンコの用語と言う訳ではありません。
でも、多くの日本のフラメンコ関係者がよく使っていて、
フラメンコを始めたばかりの人は違いがよくわかっていないかもしれないので
今回とりあげようと思いました。
実際にスペインではヒターノとだけ呼ばれているのですが、
どういう意味なのか、正確にご存知でしょうか?
ヒターノがジプシーのことなら、
流浪の民、物乞いする人、路上生活者などを表すんでしょ?
と思う方も多いと思いますが、実はそうではないんです。
私のカンテの師匠のホセ・デ・ラ・トマサもヒターノの家庭で産まれました。
代々フラメンコアーティストの家系で、
現在カディスに別荘とクルーザーを持っています。
別荘とクルーザーがあるということは、
物乞いとか路上生活者とかではない、ある程度裕福な家庭ですよね。
でも、ホセご自身、私はヒターノだよ。と言うように、
彼はヒターノの、それもかなりの大家族の家長でもあるんです。
では、彼の言うヒターノってどういう意味なんでしょうか?
今回のお話の大事な部分に入ります。
実は、ヒターノは、血族、血筋みたいなもののようなんです。
現在のヒターノ研究では、
今から2000年くらい前に北部インドから政治的理由などで出てきた人たちが、
15世紀ごろに南スペインのアンダルシア地方に住み着き、
現在のヒターノはその末裔ではないかと言われています。
アンダルシアに住み着いて500年以上たっているので
使っている言葉も、宗教も、今ではほぼ一般のスペイン人と一緒です。
また、基本的にヒターノの家に生まれなければ、
ヒターノであると言うことはできません。
以前はヒターノはヒターノ外の人との結婚がタブーだったんですけれど、
現在ではヒターノとヒターノ外の人の結婚もずいぶん増えてきました。
ヒターノの男性とヒターノ外の女性の場合は、結婚後はヒターノの家族の中で、
ヒターノの伝統を守って暮らす場合が多いようなんですが、
女性がヒターノ(ヒターナ)の場合は、ヒターノらしい生活を守っていくのか、
一般のスペイン人として生きて行くのかを選んで暮らしていくようです。
ただヒターノと結婚してヒターノの家族の中で暮らしても、
生まれつきのヒターノではない人は一生ヒターノとは呼ばれないので、
家族の中でも、ずっと外の人としての扱いが続くようなんですよね。
でも、そんな2人の間に生まれた子供は、
ヒターノの家族の中で育てばヒターノと認められるようです。
ではそんなヒターノ達が一般のスペイン人とは何が違うのかと言うと、
もちろんヒターノの血族であるかどうかなんですけれど、
独自の考え方で生きているという点が一番の違いだと思います。
彼らはとにかくすべてを大家族単位で考えるようで、
一般のスペイン人のような核家族主義ではありません。
仕事やお金に関する考え方や価値観、生活習慣もかなり独特で、
以前はスペインの法律とは相いれない部分もあったようです。
でも、現在のヒターノはスペインの法律を守りながら、
ヒターノ独自の考え方との両立を計って暮らしています。
ヒターノ独自の考え方で有名なものとしては、
基本的に土地や財産に執着しない、
結婚は親が決めた相手とかなり若いうち(15歳くらいまで)にするなど
があります。
独特の方法で行われる結婚式やお葬式なども有名ですね。
でも、実はヒターノの生活様式や決まり事などはほとんと公開されてなくて、
ヒターノ以外のスペイン人も良くは知らないんです。
自分たちの考え方を公開しないのも、ヒターノの大事な決まりごとのようです。
ちなみに、ヒターノとして生まれても、ヒターノの家の決まりを守れない人は、
ヒターノの家を追い出されることもよくあることのようで、
ヒターノの家を出てから生活に困り、悪いことをしてしまうという話も
時々聞きます。
ここで忘れていけないことをひとつお話しして
ヒターノ説明を終わりたいと思います。
それは、ヒターノはいまでもスペインでは差別の対象であるということ。
私の師匠のような恵まれたヒターノはほんの一握りです。
一般の会社に就職することはいまでも難しいので、
ヒターノの家族に勉強の出来ることもが生まれれば、
教育に力を入れて、弁護士や医者などの難しい資格を取らせようとします。
資格さえあれば、たとえヒターノの家に生まれても
安定した収入が見込まれるからなんです。
ただもともとヒターノは学校に通う習慣がなく、
私世代のヒターノには、字が読み書きできない人が今でも大勢います。
そんな親の元に生まれた子供が、
大学まで勉強を続けることはかなり難しいのですが、
時代とともにちゃんと学校を卒業したヒターノも増え、
現在では大学でフラメンコ研究をするヒターノもいるんですよ。
今後、ヒターノのフラメンコアーティストの家に生まれた子ども達が、
フラメンコの歴史などの研究に積極的に携わることで、
今までわからなかったことも、解明されていくかもしれませんね。
ジプシーとヒターノの違い、おわかり頂けましたでしょうか?
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なんか違いがわかり難いフラメンコ用語ってありますよね。
レッスンを受け始めたものの、しばらく公演に通ったものの、
なんだかすっきりとしないあなたの為に、
そんな違いがわかり難いフラメンコ用語を解説いたします。
今回紹介するのはジプシーとヒターノです。
ジプシーとヒターノはどちらもフラメンコの用語と言う訳ではありません。でも、多くの日本のフラメンコ関係者がよく使っていて、フラメンコを始めたばかりの人は違いがよくわかっていないかもしれないので今回とりあげようと思いました。
実際にスペインではヒターノとだけ呼ばれているのですが、どういう意味なのか、正確にご存知でしょうか?
ヒターノがジプシーのことなら、流浪の民、物乞いする人、路上生活者などを表すんでしょ?
と思う方も多いと思いますが、実はそうではないんです。
私のカンテの師匠のホセ・デ・ラ・トマサもヒターノの家庭で産まれました。
代々フラメンコアーティストの家系で、現在カディスに別荘とクルーザーを持っています。
別荘とクルーザーがあるということは、物乞いとか路上生活者とかではない、ある程度裕福な家庭ですよね。
でも、ホセご自身、私はヒターノだよ。と言うように、彼はヒターノの、それもかなりの大家族の家長でもあるんです。
では、彼の言うヒターノってどういう意味なんでしょうか?
今回のお話の大事な部分に入ります。
実は、ヒターノは、血族、血筋みたいなもののようなんです。
現在のヒターノ研究では、今から2000年くらい前に北部インドから政治的理由などで出てきた人たちが、15世紀ごろに南スペインのアンダルシア地方に住み着き、現在のヒターノはその末裔ではないかと言われています。
アンダルシアに住み着いて500年以上たっているので使っている言葉も、宗教も、今ではほぼ一般のスペイン人と一緒です。
また、基本的にヒターノの家に生まれなければ、ヒターノであると言うことはできません。
以前はヒターノはヒターノ外の人との結婚がタブーだったんですけれど、現在ではヒターノとヒターノ外の人の結婚もずいぶん増えてきました。
ヒターノの男性とヒターノ外の女性の場合は、結婚後はヒターノの家族の中で、ヒターノの伝統を守って暮らす場合が多いようなんですが、女性がヒターノ(ヒターナ)の場合は、ヒターノらしい生活を守っていくのか、一般のスペイン人として生きて行くのかを選んで暮らしていくようです。
ただヒターノと結婚してヒターノの家族の中で暮らしても、生まれつきのヒターノではない人は一生ヒターノとは呼ばれないので、家族の中でも、ずっと外の人としての扱いが続くようなんですよね。
でも、そんな2人の間に生まれた子供は、ヒターノの家族の中で育てばヒターノと認められるようです。
ではそんなヒターノ達が一般のスペイン人とは何が違うのかと言うと、もちろんヒターノの血族であるかどうかなんですけれど、独自の考え方で生きているという点が一番の違いだと思います。
彼らはとにかくすべてを大家族単位で考えるようで、一般のスペイン人のような核家族主義ではありません。
仕事やお金に関する考え方や価値観、生活習慣もかなり独特で、以前はスペインの法律とは相いれない部分もあったようです。
でも、現在のヒターノはスペインの法律を守りながら、ヒターノ独自の考え方との両立を計って暮らしています。
ヒターノ独自の考え方で有名なものとしては、基本的に土地や財産に執着しない、結婚は親が決めた相手とかなり若いうち(15歳くらいまで)にするなどがあります。
独特の方法で行われる結婚式やお葬式なども有名ですね。
でも、実はヒターノの生活様式や決まり事などはほとんと公開されてなくて、ヒターノ以外のスペイン人も良くは知らないんです。
自分たちの考え方を公開しないのも、ヒターノの大事な決まりごとのようです。
ちなみに、ヒターノとして生まれても、ヒターノの家の決まりを守れない人は、ヒターノの家を追い出されることもよくあることのようで、ヒターノの家を出てから生活に困り、悪いことをしてしまうという話も時々聞きます。
ここで忘れていけないことをひとつお話ししてヒターノ説明を終わりたいと思います。
それは、ヒターノはいまでもスペインでは差別の対象であるということ。
私の師匠のような恵まれたヒターノはほんの一握りです。
一般の会社に就職することはいまでも難しいので、ヒターノの家族に勉強の出来ることもが生まれれば、教育に力を入れて、弁護士や医者などの難しい資格を取らせようとします。
資格さえあれば、たとえヒターノの家に生まれても安定した収入が見込まれるからなんです。
ただもともとヒターノは学校に通う習慣がなく、私世代のヒターノには、字が読み書きできない人が今でも大勢います。
そんな親の元に生まれた子供が、大学まで勉強を続けることはかなり難しいのですが、時代とともにちゃんと学校を卒業したヒターノも増え、現在では大学でフラメンコ研究をするヒターノもいるんですよ。
今後、ヒターノのフラメンコアーティストの家に生まれた子ども達が、フラメンコの歴史などの研究に積極的に携わることで、今までわからなかったことも、解明されていくかもしれませんね。
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