コラム
カンテの基礎知識

 
148回 カンテを学ぶということー10

2021年3月14日アップ

前回は、カンテコンクールが開かれるようになった経緯をお話ししました。
 
その後カンテはバイレも伴って、海外にショーをしに出かけるようになるまで
発展したのはご存じのとおりです。
 
ところが、しばらく前にこちらのコラムにも触れたように、
その後カンテは政変に巻き込まれ、
純粋に芸術としてではない意味で利用されてしまったんです。
 
その後の1970-80年代にかけて、
フラメンコはもともとの姿とは少し違ってしまいました。
 
この時代を、フラメンコの歴史学者たちはカンテ暗黒時代と呼びます。
 
なぜ暗黒時代なのかと言うと、、、
今回はそのあたりを中心にお話ししたいと思います。
 
当コラムで何度もご紹介しているように、
フラメンコはわずか60弱の曲種をレパートリーとしています。
 
他のどの音楽と比べても、かなり少ない方だといえるのではないでしょうか。
 
ところが、この少ないレパートリーがより少なくなってしまったのが、
このカンテ暗黒時代なんです。
 
この時代にリリースされたアルバムの収録曲をみると、
どの歌手のアルバムを見ても、
全部でせいぜい10曲種ほどしか出てこないことに気が付くと思います。
 
どうして10曲種ほどしか歌われなくなったのか、その理由は色々あるのですが、
しゃがれ声の流行がその一番の原因と言われています。
 
というのも、フラメンコのレパートリーには、
しゃがれ声にはあまり似合わない曲種も多く、
音域もかなり広い歌もあるからなんです。
 
広い音域と透き通った声でないと歌いこなせないカンテは、
この時期ほとんど歌われなくなってしまい、
比較的音域の狭いシギリージャやソレアばかりが、
好んで歌われるようになりました。
 
同時に、他の音楽でも人気がある時期によく起こることなんですが、
とにかくカンテだと言って歌いさえすればお客が喜んだので、
正しいメロディをまもるということを、多くのフラメンコ歌手が
忘れてしまったんです。
 
そして、フラメンコ歌手達は、人気に甘んじたせいか、
なんとなく聞き覚えたカンテを適当に混ぜて歌うようにもなってしまいました。
 
いくつかのカンテのメロディを混ぜて歌うということは、
そのまま曲種の減少を意味します。
 
この時期、流行に乗ってカンテファンはかなり増えたのですが、
ライブに何度行ってもいつも同じカンテばかりだったので
すぐに飽きられてしまって、流行はそう長くは続かず、
ある時期を境に一気にファンが離れて行ってしまいました。
 
そして、とても残念なことに、多くのフラメンコ歌手は仕事では
わずか10曲種ほどしか歌わなかったので、
他のカンテを学ぶ努力をしていなかったんです。
 
なので、カンテが飽きられ流行が下火になり、
フラメンコ歌手達がなんとかしなくっちゃと思った頃には、
他の曲種を歌って観客の興味を引くことは、もはやできなくなっていました。
 
以上のような理由で、フラメンコがとても流行していたはずなのに、
この時期をカンテ暗黒時代と呼ぶことになります。
 
その後、そんな状況をなんとかしようと思ったのが、
カンテが流行する前からのファン、
そんな時代でも流行に流されず多くの曲種を学ぶ努力を忘れなかった
少数のフラメンコ歌手、そしてアンダルシア政府をはじめとした、
各県の役所などで、みんなで協力してカンテ救済の努力をはじめたのは
1990年ごろのこと。
 
実は、私が学んだセビリアのフラメンコ芸術学院も、
カンテ復興の為に尽力した機関のひとつなんです。
 
カンテの流行が終ってしまわないように、長い間愛されるようにする為には、
カンテのメロディひとつひとつが混ざってしまわないように、
1曲1曲のメロディを正確に区別し、かつカンテのすべてのメロディを
忘れ去られてしまわないように学び、歌い継ぐ努力を続けることが重要です。
 
その後、アンダルシア政府が率先して旗を振って、
スペインのあちこちにカンテの学校が作られたり、
多くの曲種を歌うコンクールを行うなど様々な試みが行われました。
 
それらの努力が実って、2000年ごろには人気が低迷していたカンテも、
2010年ごろには復活の兆しが見え始め、忘れさられていたカンテも
ひとつづつ復活、2015年頃にはカンテ人気はすっかり元通りになりました。
 
今は新型コロナの影響でコンサート活動などは難しいのですが、
それでもネット上の活動などカンテは多くのファンを集めています。
 
以上のように、カンテの正しいメロディを1曲でも多くきちんと覚え、
次の世代に伝えることは、カンテの文化を守るために
フラメンコ歌手がすべき大事な役割なんです。
 
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前回は、カンテコンクールが開かれるようになった経緯をお話ししました。
 
その後カンテはバイレも伴って、海外にショーをしに出かけるようになるまで発展したのはご存じのとおりです。
 


 
ところが、しばらく前にこちらのコラムにも触れたように、その後カンテは政変に巻き込まれ、純粋に芸術としてではない意味で利用されてしまったんです。
 
その後の1970-80年代にかけて、フラメンコはもともとの姿とは少し違ってしまいました。
 


 
この時代を、フラメンコの歴史学者たちはカンテ暗黒時代と呼びます。
 
なぜ暗黒時代なのかと言うと、、、
今回はそのあたりを中心にお話ししたいと思います。
 


 
当コラムで何度もご紹介しているように、フラメンコはわずか60弱の曲種をレパートリーとしています。
 
他のどの音楽と比べても、かなり少ない方だといえるのではないでしょうか。
 


 
ところが、この少ないレパートリーがより少なくなってしまったのが、このカンテ暗黒時代なんです。
 
この時代にリリースされたアルバムの収録曲をみると、どの歌手のアルバムを見ても、全部でせいぜい10曲種ほどしか出てこないことに気が付くと思います。
 


 
どうして10曲種ほどしか歌われなくなったのか、その理由は色々あるのですが、しゃがれ声の流行がその一番の原因と言われています。
 
というのも、フラメンコのレパートリーには、しゃがれ声にはあまり似合わない曲種も多く、音域もかなり広い歌もあるからなんです。
 


 
広い音域と透き通った声でないと歌いこなせないカンテは、この時期ほとんど歌われなくなってしまい、比較的音域の狭いシギリージャやソレアばかりが、好んで歌われるようになりました。
 


 
同時に、他の音楽でも人気がある時期によく起こることなんですが、とにかくカンテだと言って歌いさえすればお客が喜んだので、正しいメロディをまもるということを、多くのフラメンコ歌手が忘れてしまったんです。
 


 
そして、フラメンコ歌手達は、人気に甘んじたせいか、なんとなく聞き覚えたカンテを適当に混ぜて歌うようにもなってしまいました。
 
いくつかのカンテのメロディを混ぜて歌うということは、そのまま曲種の減少を意味します。
 


 
この時期、流行に乗ってカンテファンはかなり増えたのですが、ライブに何度行ってもいつも同じカンテばかりだったのですぐに飽きられてしまって、流行はそう長くは続かず、ある時期を境に一気にファンが離れて行ってしまいました。
 


 
そして、とても残念なことに、多くのフラメンコ歌手は仕事ではわずか10曲種ほどしか歌わなかったので、他のカンテを学ぶ努力をしていなかったんです。
 
なので、カンテが飽きられ流行が下火になり、フラメンコ歌手達がなんとかしなくっちゃと思った頃には、他の曲種を歌って観客の興味を引くことは、もはやできなくなっていました。
 


 
以上のような理由で、フラメンコがとても流行していたはずなのに、この時期をカンテ暗黒時代と呼ぶことになります。
 


 
その後、そんな状況をなんとかしようと思ったのが、カンテが流行する前からのファン、そんな時代でも流行に流されず多くの曲種を学ぶ努力を忘れなかった少数のフラメンコ歌手、そしてアンダルシア政府をはじめとした、各県の役所などで、みんなで協力してカンテ救済の努力をはじめたのは1990年ごろのこと。
 


 
実は、私が学んだセビリアのフラメンコ芸術学院も、カンテ復興の為に尽力した機関のひとつなんです。
 


 
カンテの流行が終ってしまわないように、長い間愛されるようにする為には、カンテのメロディひとつひとつが混ざってしまわないように、1曲1曲のメロディを正確に区別し、かつカンテのすべてのメロディを忘れ去られてしまわないように学び、歌い継ぐ努力を続けることが重要です。
 


 
その後、アンダルシア政府が率先して旗を振って、スペインのあちこちにカンテの学校が作られたり、多くの曲種を歌うコンクールを行うなど様々な試みが行われました。
 


 
それらの努力が実って、2000年ごろには人気が低迷していたカンテも、2010年ごろには復活の兆しが見え始め、忘れさられていたカンテもひとつづつ復活、2015年頃にはカンテ人気はすっかり元通りになりました。
 


 
今は新型コロナの影響でコンサート活動などは難しいのですが、それでもネット上の活動などカンテは多くのファンを集めています。
 


 
以上のように、カンテの正しいメロディを1曲でも多くきちんと覚え、次の世代に伝えることは、カンテの文化を守るためにフラメンコ歌手がすべき大事な役割なんです。
 
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