コラム
カンテの基礎知識
フラメンコの基礎知識
(15)カンテとバイレの関係
<バイレとカンテが合わない時ー解決編>
前回はバイレとカンテが合わない理由をご説明しました。
では、今回はお待ちかねの解決編をお送りしたいと思います。
フラメンコの世界にはとっても大事な<原則>がある。
これが、前回のコラムの最後に書いたことばです。
この原則っていうのを知れば、解決方法はつねにひとつに決まります。
今日はこの原則をお話ししたいと思います。
私がスペインに留学してすぐのことです。
何人ものフラメンコ歌手が一堂に会するコンサートに行きました。
たしか全部で7人ほどの歌手が出たと思うんですが、
一番最後に出演した、私のスペインでの最初の師匠ホセ・デ・ラ・トマサが、
普段あまり聞いたことのないレパートリーばかり歌いました。
コンサートが終ってから、
どうして得意曲ではないカンテばかりを歌ったのかをホセに直接聴いてみたんです。
”俺の前に出たカンテさん達が、すでに歌ってしまったのでしかたないんだよ。”
との答え。
”って、なんで?”
フラメンコの原則を知らなかった私は、なんのことやらさっぱり。
それで、もう一度質問を繰り返してみたら、
”もしかしてマヌエラは知らないのかもしれないけど、
ひとつのコンサートでは、同じ曲は1回しか歌えないんだよ。
他の歌手が先に歌ってしまったら、自分は他のを歌わないとね。”
”なーるほど。”
”だから、たくさんレパートリーを持つようにしようね。”
”はい。頑張らなくっちゃ。”
”そうだ、一生勉強を続けて、レパートリーを増やし続けるんだよ。”
”でも、ホセが歌いたいカンテを前もって言っておけば、
他の歌手は歌わないでおいてくれるんじゃないの?”
”マヌエラ、僕はホセ・デ・ラ・トマサだよ。”
”そう。だから誰もホセの得意なカンテをとったりしないでしょ?”
”え? 何を言ってるの? 俺が一番のベテランなんだよ。”
”もちろんよホセ。そんなこと知ってるわ。”
”じゃあ、残りのカンテを歌うしかないじゃないか。”
この後、ホセはキョトンとしながらも、丁寧に説明してくれました。
何人ものフラメンコ歌手が一緒の舞台に立つ場合、
曲を決めるのは新人からと決まっている。
なぜなら、まだレパートリーも少ないし、上手に歌えるカンテもあまりないから、
得意なカンテを選ばせるあげるんだ。
新人から順に得意なカンテを取って行って、
ベテランは残りの曲種からカンテを選ぶんだよ。
それでも、素晴らしいカンテを披露できるからベテランのフラメンコ歌手なんだ。
どんな曲種が回って来ても、後輩の歌手より観客を満足させる。
それが、ベテラン歌手のプライドなんだよ。
だから、後輩の歌手達は、俺の得意曲でも遠慮なく選ぶんだ。
それだけ俺を認めてるってことなんだ。
実は、これがフラメンコの大原則なんです。
☆ベテランは、常に新人に合わせ、ゆずるもの。
という訳で、カンテとバイレが合わない時、
調整するのは、常にベテランさんの役目ということになります。
(または、能力がある方が合わせる場合もあります。)
これ、ものすごくスペイン人らしいですね。
後輩は甘え上手になって安心して舞台に立てるし、
先輩は後輩の前でいいカッコが出来ちゃうし、
全体としてのコンサートのレベルもあがるんです。
ベテランになっても、勉強を続けないといけないこのシステム。
フラメンコアーティスト全体のレベルアップにも繋がりますよね。
さーすがスペイン、いちいち理にかなっています。
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では、今回はお待ちかねの解決編をお送りしたいと思います。
フラメンコの世界にはとっても大事な<原則>がある。
これが、前回のコラムの最後に書いたことばです。
この原則っていうのを知れば、解決方法はつねにひとつに決まります。
今日はこの原則をお話ししたいと思います。
私がスペインに留学してすぐのことです。
何人ものフラメンコ歌手が一堂に会するコンサートに行きました。
たしか全部で7人ほどの歌手が出たと思うんですが、一番最後に出演した、私のスペインでの最初の師匠ホセ・デ・ラ・トマサが、普段あまり聞いたことのないレパートリーばかり歌いました。
コンサートが終ってから、どうして得意曲ではないカンテばかりを歌ったのかをホセに直接聴いてみたんです。
”俺の前に出たカンテさん達が、すでに歌ってしまったのでしかたないんだよ。”
との答え。
”って、なんで?”
フラメンコの原則を知らなかった私は、なんのことやらさっぱり。
それで、もう一度質問を繰り返してみたら、
”もしかしてマヌエラは知らないのかもしれないけど、ひとつのコンサートでは、同じ曲は1回しか歌えないんだよ。他の歌手が先に歌ってしまったら、自分は他のを歌わないとね。”
”なーるほど。”
”だから、たくさんレパートリーを持つようにしようね。”
”はい。頑張らなくっちゃ。”
”そうだ、一生勉強を続けて、レパートリーを増やし続けるんだよ。”
”でも、ホセが歌いたいカンテを前もって言っておけば、他の歌手は歌わないでおいてくれるんじゃないの?”
”マヌエラ、僕はホセ・デ・ラ・トマサだよ。”
”そう。だから誰もホセの得意なカンテをとったりしないでしょ?”
”え? 何を言ってるの? 俺が一番のベテランなんだよ。”
”もちろんよホセ。そんなこと知ってるわ。”
”じゃあ、残りのカンテを歌うしかないじゃないか。”
この後、ホセはキョトンとしながらも、丁寧に説明してくれました。
何人ものフラメンコ歌手が一緒の舞台に立つ場合、曲を決めるのは新人からと決まっている。 なぜなら、まだレパートリーも少ないし、上手に歌えるカンテもあまりないから、得意なカンテを選ばせるあげるんだ。
新人から順に得意なカンテを取って行って、ベテランは残りの曲種からカンテを選ぶんだよ。
それでも、素晴らしいカンテを披露できるからベテランのフラメンコ歌手なんだ。どんな曲種が回って来ても、後輩の歌手より観客を満足させる。それが、ベテラン歌手のプライドなんだよ。
だから、後輩の歌手達は、俺の得意曲でも遠慮なく選ぶんだ。それだけ俺を認めてるってことなんだ。
実は、これがフラメンコの大原則なんです。
☆ベテランは、常に新人に合わせ、ゆずるもの。
という訳で、カンテとバイレが合わない時、調整するのは、常にベテランさんの役目ということになります。(または、能力がある方が合わせる場合もあります。)
これ、ものすごくスペイン人らしいですね。
後輩は甘え上手になって安心して舞台に立てるし、先輩は後輩の前でいいカッコが出来ちゃうし、全体としてのコンサートのレベルもあがるんです。
ベテランになっても、勉強を続けないといけないこのシステム。フラメンコアーティスト全体のレベルアップにも繋がりますよね。
さーすがスペイン、いちいち理にかなっています。
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